本屋好きの僕には悲しい事ですが、全国の書店はどんどんつぶれています。そして出版社もどんどんつぶれています。リブロ池袋が閉店し、ジュンク堂新宿が閉店し、明屋書店はトーハングループに組み込まれ、
ジュンク堂書店と丸善書店がCHIグループの子会社となり、と1999年から 2015年までに 8,808軒の書店が減少しています16年で40%減。歯医者より厳しいです。
9月23日の読売オンラインには、『書店が地域に1軒もない「本屋ゼロ」の市町村が、全国300以上に上っている』という記事が掲載されていました。
現在でも書店の少なさと品ぞろえが切ない状態なのに、これ以上本屋がつぶれてしまうと書店での出会い(帯買いや推薦文買い、追っていない作者の久しぶりの新刊、書店POP買い)という楽しみがなくなりそうで何とか頑張ってくれ!とエールを送らざるを得ません。
書店の苦境は多岐にわたります。
これはイオンができてシャッター買いができるのと同じ仕組みですが、大きくて広い、当然棚数が多く品数が多い店舗ができると小規模店舗は学術書専門、美術系に強い、アニメイト等のジャンル特化型店舗でないと生き残るのが苦しくなります。まずはこれで家族経営の小規模店がかなり閉店していきました。
ソースがやや怪しいですが、利益率の高い雑誌、エロ系がコンビニに置かれ、これもかなりのダメージを受けたようです。
ブックオフなどの大手古本書店ができたことで益々書店での購入に影が差すことになりました。
この問題は、出版社、作者にもマージンが入らないという点で出版社にも大きなダメージを与えています。結構この事実を知らない(考えて無い?)方もいるようでTwitterなどで作家が「昨日古本屋で全巻購入して読みました」などとリプライをもらい困惑する場面を幾度か見たことがあります。複雑でしょうね・・・。
返本問題とも言われていますが、文化の保護の一面から書店はどこでも一律に同じ値段で販売する縛りがあり、セールができないこと。出版社から委託されているため、返本が可能でこれがないと売れないかもしれない本を置いてくれないのでなければないで困る制度なのですが、出版社から書店に委託を行う間に取次が入るため、取次の意向に左右される(人気作家の本が制限される、セット売りされる)事で書店の自由度が下がる事、小規模店舗がますます苦しくなること等の問題があります。また、返本にかかる印刷、梱包、移送、保管コストもばかにならないうえに現在の返本率は40%と上がっており、このコストが本の価格を上げています。単純に1000円で売る本が、40%返本がおこる場合1680円で売らなくてはならないことになります。
前述の読売オンラインでも触れられていましたが、消費税にあたる税の標準税率20%の英国は、出版物の税率0%。19%のドイツも7%、しかし日本にはこの税制がなく本の価格が上がっています。 ジャンプは昔160円 コミックスは昔320円、文庫本は400円、ノベルズは700円で買えましたね・・・。
僕も利用していますし、便利なのですが、後述の万引き被害がなく人件費と家賃が節約できることで強力なオンラインショップ、家からポチれば終了のネット購入はますます書店から足を遠のけています。まあ、本の雑誌やこのミスのランキング後半とかでも新人作家だと7店舗回っても置いてなかったりしますから仕方ない面はありますが。昨年なんか4位以下は一桁ランキングでも大御所の本しか置いてなかったり。
青空文庫などで版権切れ小説がよめるので、菊池寛や国木田独歩を読み返そうといった場合にそもそも購入する必要がなくなってしまいました。コミックもこちらに移行中。ただし、海外に比べ価格が高い、データロストの可能性があるなどでまだまだ安定はしていない印象です。実際KDDIは来年4月で電子書籍「LISMO BOOK STORE」サービス終了。「PDABOOK」って老舗の電子書籍ストアも今月で終了とのことです。
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スマホ、タブレットで移動中、空き時間の時間つぶしが可能
じつは一番問題かもしれないですが、人を待つ間、出張の新幹線、飛行機、ホテルの時間つぶしに小説をという方は多かったはずですが、キオスクの本は今どれだけ売れているのでしょう?
電車で書籍を読んでいる方を見る機会がぐっと少なくなった気がします。
もともと利益率が極端に低い書店(約22%)そこから家賃、人件費をねん出して、さらに万引きによるロスと、これに対する対策を割かないといけない。実際問題閉店の原因はこれがかなりの上位に来るのではと思います。
2012年日経MJ第40回日本の専門店ランキングで紀伊國屋書店の経常利益率は0.4%、 書店の全国平均経常利益が0.6%に対して万引きでの損失は1.41%です。これはやや極端な例になりますが、経常利益率は0.4%の場合1000円の本が万引きされれば25万円売上なくてはならないことになります。
もちろん書店だけの問題ではないのですが、万引きの被害総額は書店以外も含めると年間4615億円。書店一店舗当たりの年間平均被害額は211万円です。
月商1200万の地方郊外店を例にとると、300万が年間被害額、利益率が22%として1か月半は万引きのためにただ働きをしていることになります。さらに実際には、監視カメラ・ミラー・モニター・電子タグの導入、警備員等の費用が発生します。そのうえ、10%ほどの確率で万引きを捕まえた場合、警察の調書で3~4時間、未成年の場合は親御さんの到着待ちやさらにそこからのクレームの対処が必要な場合があります。逸失利益は計り知れません。ジュンク堂の場合警備員の費用だけで1か月75万円の経費が掛かっています。 小規模店ではまずこの対策を取ることができないまま、万引き被害が積み重なって閉店というケースも多いようです。有名な事件ですが、万引きした中学生がにげた結果電車にはねられ死亡し、店主が「人殺し」など非難の電話や嫌がらせをうけ閉店したケースもあります。
最近では万引きに対して該当品だけでなく、対策にかかった費用も請求するケースもあるようですが、「万引きぐらいで」とか「金を払えばいいんだろ」という人はまず、額面年収の2か月分を取っていく泥棒を許せるのかと考えてほしいです。そして非難した書店に年収2か月分払ってほしい。
以上思いつく限りでこれだけの問題が降りかかってきています。そりゃつぶれるよな・・・。
中にはそんなの書店だけの問題じゃないってこともありますし、仕方ないだろって面もあります。
書店関係の人間というわけではないのでざらっと調べて間違いを書いている可能性もありますが、まあ、書店が大変なんだって雰囲気だけでも伝われば。
僕自身は、書店で目当ての本を見つけたり、好きな作家の新刊を買いに行って帯や表紙やあおりを眺めてわくわくしたり、うちに帰るのも待ちきれずに書店を出て本の読めるところを探して読み始めたり、「あ、この先生新刊出してたんだ!」って書店で気が付いて思わぬ出会いにほくそえんだりと、小学校の遠足の前日とか、サンタさんがいると信じてた頃のクリスマスの日とか、買ったばかりの時計とか靴とかをはじめて身につけて出かけるときのわくわくにやにやするような喜びを沢山もらったので、こういう楽しみがなくなるのはさびしいです。子供たちにもできれば、書店での出会いをあじわってほしいなと思います。