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あきる歯科ブログ 2016年3月

歯医者が教える「歯を削らない方が歯が長持ちする」の本当と嘘

◆歯を削らない方が歯は長持ちする?

こんにちは、あきる歯科の濱窪です。

「歯を削るとはの寿命が短くなるんでしょう?」という質問は、結構な頻度で患者さんから問われます。
みなさんいろいろなメディアで知識を得ていますので、歯の健康への興味が大きくなっていることは非常に喜ばしい事です。
さて、この質問への回答は、基本的に「YES!!」なのですが、いくつか例外があります。

◆歯を削ると寿命が短くなる理由

まず、何故歯を削ると歯の寿命が縮まるのかですが
①詰め物、被せ物の場合 詰めたものと歯の間から虫歯になりやすくなる
 
初めから一つの塊である歯と違い、被せたもの・詰めたものは接着剤でくっつけています。接着剤は経年劣化しますので
劣化してはがれた部分や、接着剤が流れてすきまになった部分に汚れがたまると虫歯になります。
また、型取りをしてる食っている歯もミクロのレベルでは段差があります。そこについた汚れから虫歯になってしまうこともあります。
被せ物の平均寿命が7~9年くらいといわれていますので、それくらいでまた虫歯になってしまっている可能性があるということです。

②神経の治療の場合 内側から歯を削っているので歯の厚みが薄くなり割れる原因になる

虫歯が深く神経の治療を行う場合、歯の中を通る神経の管にばい菌や腐敗した神経の残骸を残すとあごの骨に膿がたまる原因になります。そこで、神経の管になる細かな凹凸に汚れが残らないように内側から凹凸がなくなるように削っていく治療が必要になります。長い期間虫歯になっていた場合などは、内側からばい菌が歯の中にしみ込んでいますので、ばい菌の入り込んだ歯ごとこそげ落とすことになります。

そうして内側から削られた歯は、自然な、神経が通っていた時よりも薄くなります。今年の4月からファイバーの土台も保険で使えるようになりましたが、歯よりも硬い金属の土台がその中に入った場合、金属の固さに歯が負けてしまい割れてしまうことがあります。

基本的には歯を削らない方が、歯の寿命は長持ちするというのはこういう理由からです。

◆歯を削った方がいい場合って?

そうするとどんな場合でも歯を削らない方がいいのではないか?ということになりますが、そもそも歯を削るのは虫歯や神経の炎症が起きているのが理由です。神経にばい菌が入っている場合や虫歯ができている場合は治療のために歯を削らないと、我慢していてもどんどん悪化して治療が苦しく、難しくなっていくだけです。歯を削った方がいいというわけではありませんがこの場合は削らなければ治療ができませんので仕方ないということになります。

歯を削らないことにこだわりすぎて、病気の歯を放置することを希望する事がありますが、これは後で治療を行った場合より大きく歯を削ることになるか、最悪歯を失うことになりますのでお勧めできません。「絶対に歯は削らない方がいい!」と思いこまないようにしてください。タイトルの「歯を削らない方が歯が長持ちする」が嘘になる場合はこの場合です。

また、歯の色合いや形態が気になる場合、歯の生え方の問題で虫歯や歯周病になりやすい場合などは歯を削って詰め物やかぶせ物を行うことで、きれいな歯の色合いを得ることや、清掃しやすい形態にして今後の歯の寿命を長くできる場合もあります。上に書いてある過去に治療した詰め物から虫歯になってきている場合なども、放置するよりは治療を行って清掃しやすい形にする方が、多くの場合お薦めになります。

◆それでも歯を削りたくない場合

薬剤の殺菌作用で歯にしみ込んだばい菌を殺菌するドッグベストセメントや3MIX、神経が露出した場合に神経を保護し、歯の壁ができるのを促すMTAセメントなど歯を削らない、もしくは神経を残す治療を行えば治療のために歯の寿命を縮めることを避けることは可能ですが、一番いいのは予防をしっかり行い、歯を削る機会をつくらないことです。

また、歯を失った場合に両脇の歯を削って繋ぐブリッジという治療法を行う場合、神経を抜いて歯をすべて覆うように被せる場合もありますが、歯の寿命を考えた場合、削る量を最小限にして歯をつなぐ接着ブリッジという方法もあります(歯のかむ部分と舌側のみ削り接着剤の強さで固定する方法)。

この方法であれば外側(唇・頬側の自分の歯は残すことができ、削る量もすべて覆う場合の20~40%くらいですむため、見た目もよく、歯の寿命も縮めすぎないで治療することが可能です。(欠損した歯の数や、残っている歯の状態によっては選択できません。担当医にご相談ください)

◆虫歯は自然に治る?

 
このことに関連して、しばらく前にメディアに流れていた、「虫歯は放置していても治る」ということを念頭に置いて歯を削らない方もいますが、これは大きな間違いです。正確にいうと、「穴が開くほどでない虫歯の場合は、口腔内の環境が整っていれば再石灰化することで回復する場合がある」です。

脱灰と呼ばれる歯の表面が酸で溶け白っぽくなっている状態は、口腔内が酸性に傾くことで起こり、唾液の感想作用によりアルカリ性に傾けば唾液中のリンやカルシウム分を補給することで半透明の健康な状態に戻ります。目で見える穴が開いてしまった状態から自然回復することは現実的に難しいです。

この脱灰からの再石灰化自体は非常にいいことなので、口腔内の清掃をしっかり行い細菌を減らすこと、口の中が酸性に傾く砂糖の摂取を控えること、酸を中和する唾液を出すためによく噛むこと、再石灰化を促すフッ素を使用すること、歯の成分を補給するPOS‐CAFやリナメル、MIペーストを使用することで脱灰の治療を行っています。

最後にもう一つ、これも上記の話と混ざって伝わっていることがありますが、「小さい虫歯は削らないで進行を止めることで歯を削らない」という方法はあります。 以前も少し触れていますが、これについてはまた後日書こうと思います。

歯の清掃率を簡単に向上させる方法。 え?お猿さんもフロスをするの?

こんにちは、あきる歯科院長の濱窪です。

院内で歯磨きについてご説明するときに必ずお話しするのが、歯ブラシ以外の歯間ブラシ、フロスを使って下さいということです。

歯ブラシがよほど苦手な方でない限り、時間(1回5分くらい)と回数(一日3回最低朝晩2回)を守っている方ならば、歯の汚れはある程度落とせています。しかし、歯ブラシで落とせる汚れは60%くらいだといわれています。歯磨きの上手な方、歯科医院でブラッシング法を教わって丁寧に歯磨きされている方はこの限りではないですが、60%から歯磨きのスキルを上げて清掃率をよくするのなら、フロスや歯間ブラシを使った方がよほど効率的になります。

音波ブラシや、ウオーターピックなど効果の高い補助器具はいろいろとありますが、コストが安く、すぐできて、効果が高いという点ではフロスが一番おすすめになります。歯間ブラシは歯周病の方にはおすすめですが、やりすぎると歯の間が傷がついたり歯茎の退縮を起こすことがあります。フロスも使い方を間違えば歯茎を傷つけたり、歯を削る危険はありますが、どんな方でもある程度使用可能です。
そして、フロスを使用することで、前述の清掃率は60%から80%に簡単に向上します。

フロスの使用で気を付けることは、歯の根元に沿わせてかきあげるように上に動かすこと、歯の側面をのこぎりで引くようにギコギコ動かさないこと(歯と歯の間を通すときに通りにくい時だけ前後運動してください)、力を入れすぎて歯茎に食い込ませないことです。

比較的容易に清掃率を改善することができるフロスですが、アメリカでは80%が歯磨きの時にフロスを併用し、スウェーデンでは50%、日本では20%の使用率です。
「虫歯になりやすい」、「歯磨きが上手にできない」という方はまずフロスを使用してはいかがでしょう?フッ素をしみこませたフッ素入りフロス何てものもありますよ。

これは2009年の記事ですが、カニクイザルの母親が、子ザルにフロスの使い方を教えている動画です。

タイの野生のカニクイザルが人間の髪の毛を数本よりあわせてフロスを作り、歯磨きに使っていたそうです。
そして、子ザルにフロスのやり方を教えるために、自分で使用しているときよりもゆっくりと、大げさにフロスを使っているところをみせていたということです。

野生のサルが保証するフロスの有用性!? 
皆さんもぜひ使ってみてください。




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